最近受講を始めたオンライン美術史文化講座について触れたいと思います。
豊富な知識や情報を明るく柔らかい口調で教えてくださる吉川珠衣先生。とても和やかな雰囲気の講座です。西洋絵画についての様々な講義があり、受けたい内容を選択して受講することができます。
第一回目は「花とくだもののシンボル」
聖書や神話が描かれた西洋画に登場する花や果物がどのような意味合いを持つのか。識字率が低かった当時、絵を観るだけで“誰”の“どのような”場面か?ということがわかる、シンボル、いわゆるアトリビュート(歴史・神話上の人物に関連付けられた持ち物)に関する授業でした。ほんの少しご紹介します。
例えば「アーモンド」
“アーモンドは硬い殻に覆われているので、神様にしっかりと守られ、愛されているしるし。神の栄光がアーモンドの形で描かれることがあり、マンドラ(イタリア語でアーモンドの意味)と呼ばれる”
左の絵では聖母マリアが厚みのあるアーモンドにしっかり守られていますね。このシンボルは有名なのでしょうけれど、私は知りませんでした。
あと、驚いたのがこちら。
“百合と同様、トゲのない薔薇は純潔の象徴“。そして聖書には「人間は土の器である」という表記があり、きれいな水は神の恵みのグレースという意味とか。神の恵みの水が満ちている人間(土器)と、トゲ無しの神秘の薔薇は、聖母マリアを象徴するそうです。
シンボルと時代背景を知らなければこちらの作品が聖母マリアを意味する絵だとはなかなか気が付かないのではないでしょうか。
アトリビュートを知っていると絵画の場面が読み解けるという面白さを味わえます。これから宗教画などを観る際にどれくらい解読できるか…とワクワクしています。
第二回目は「テート・ブリテンの見どころ」
今回の講座で紹介された作品の中で特に印象深かったのがラファエル前派のミレイ作の《オフィーリア》。
シェイクスピア『ハムレット』の一場面です。自身の父親を恋人であるハムレットに殺され、発狂した末に溺死するオフィーリアの姿が描かれています。テート・ブリテンの数々の絵画の中でも1、2を争う人気の作品で、背景の木々も自然に忠実にとても丹念に描かれているとのこと。以前から気になっていた作品なので、一度は本物を間近で観て繊細な描写を味わいたいと思っています。
このモデルはのちにロゼッティの妻となるエリザベス・シダル。
そして、ロゼッティといえば、今回の講座にも登場した《プロセルピーナ》(1874年)
この作品のモデルとなったのは、ラファエル前派とも交流のあったウィリアム・モリスの妻ジェーン。豊かな黒い巻き毛と意志の強そうな眉と瞳は写真の彼女そのものです。
描かれているのは冥界に連れ去られた春の女神。そこでザクロを口にしてしまったせいで一年の半分しか地上に戻れなくなってしまい、彼女が地上に現れた時に春が訪れるという。
ザクロはプロセルピーナのアトリビュートですね。ロゼッティ、ジェーン、モリスの不思議な関係を表したといわれる魅惑的な作品です。
そして先日、友人と連れ立ってリニューアルされた六本木の蔦屋書店に立ち寄ったところ、2階に素敵なバーラウンジができていました。
ソファ席もたくさんあり、好きなドリンクと共に本の試し読みができるゆったりとした空間です。
全面の大きなガラス窓が開放的
こちらにあった「こだわりのアートカクテル」なるメニュー。
“季節毎で提案するオリジナルのアートインスピレーションカクテル。あの名画や、あの作家、あの映画etc. 飲むアートで会話も弾みます” というコンセプトだそう。
なんと、そのメニューの中に2日前の講座に登場した《プロセルピーナ》がいました。
こちらはSOLD OUTで注文ができず残念でしたが、まさか彼女に出会えるとは思っていなかったのでときめきました。
この日はポール・シニャックの作品にインスピレーションを受けて作られたラズベリー&ラベンダーのカクテルを味わいながらのんびり読書をしました。
特に2階フロアは少々マニアックな美術系の本や雑誌が置いてあり、何時間でも過ごせそう。
お気に入りの場所になりました。
(文/青龍堂 小川)
吉川珠衣先生の美術史文化講座の申込、詳細はこちらをご覧ください。
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FBコメントより
「2014年に森美術館で開催していたラファエル前派展にはオフィーリアもプロセルピナも来日していましたよ!!
時期が良くなればまたやってきてくれるかも知れません☺️
この時初めてラファエル前派を知り、以来、周辺の時代の絵画を含め、イギリス絵画にドープしています。
この講座、おもしろそうですね。」