上村松園は着物や仕草そして髷にもとてもこだわりを持っていました。
著者の中で以下のような記述があります。
むかしのように髷の形で、あの人は夫人であるか令嬢であるかの見別けがつかなくなった。いまの女性は、つとめてそういったことをきらって、殊更に花嫁時に花嫁らしい髪をよそおうのを逃げているようである。
以前は若い女性は結婚というものを大きな夢に考えて憧れていたから、花嫁になると、すぐにその髪を結って、「私は幸福な新妻でございます」と、その髪の形に無言の悦びを結びつけて吹聴して歩いた.....
日本人の持つ文化の中の品格や美徳を重んじた松園のこだわりの一部が垣間見られます。
松園の描く女性には、はっとするような、凛とした品格があるのも頷けます。
この作品は「うららか」という画題です。左上にひらひらと舞う紋白蝶を見上げる女性。着物の柄も片輪車に桜の花。上品で柔らかい表情の女性。春の訪れを感じさせてくれる絵です。
(文/青龍堂 店主)
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