三岸好太郎は天才と言われていますが、その人生の中ではさまざまな画風を行ったり来たりと苦悩を続けています。
フォービズムであったり岸田劉生やルソー、そしてルオーの影響が色濃く出たり......最後はモダニズムに傾倒していきます。
今回はその三岸好太郎の「風景」です。鑑定書には「風景」としか記載されていません。
1920年代後半の岸田劉生の影響の時代なのは作風でわかりますが、どこの風景で、いつ書かれたか、まではわかりませんでした。
ただ調べていくとおもしろいことがわかりました。地元札幌の頃から交流のあった俣野第四郎という画家と、三岸好太郎の年譜を見比べて見ると、三岸好太郎は1927年の秋に、節子夫人と共に岐阜から信濃大町に行っています。同年の4月に亡くなった俣野第四郎の供養に訪れたようです。
この信濃大町から比較的近いところに木崎湖があるのですが、その現在の写真が、この絵と同じでした。
この作品は1927年晩秋から初冬にかけて、信濃で書いた作品といた事が判明しました。
まさに推理の醍醐味ですね。
この風景の奥の白い山は鹿島槍ヶ岳です。遠くに逝ってしまった俣野第四郎を偲んで
いるのかも知れません。
31歳と非常に若くして亡くなった三岸好太郎の貴重な作品です。
(文/青龍堂店主)
商品情報 作家名:三岸 好太郎 作品名:風景 鑑定:東美鑑定評価機構鑑定書あり サイズ:31.8cm x 41.0cm 制作:1927年頃 キャンバス、油彩
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