スペイン生まれのピカソですが、フランコ将軍による独裁政権になってからは祖国に戻ることはありませんでした。ナチス・ドイツの支援によって成立したファシズムを嫌っていたのです。
パリで成功を収めた後、1946年、当時の若き恋人フランシス・ジローと共に南仏のヴァロリスにやってきて陶芸と運命の出会いをします。マドゥーラ窯で3000点ほどの作品を制作したそうです。独自の技法で大胆かつ繊細な絵付け。子供のように描くことを目指したピカソのワクワクする気持ちがストレートに伝わってきます。
(ピカソとの日々 著者:フランソワーズ・ジロー)
ピカソは「平和」を愛し、その象徴である「鳩」の作品を多く残しています。フランソワーズ・ジローとは2人の子供も授かり、戦争の傷も癒えました。なので、この作品はピカソの心の中の平和も表していると思っていました。
しかし制作年は1959年。実は、1953年にフランソワーズ・ジローはピカソに愛想をつかし子供と共に出て行ってしまうのです。ピカソの生涯の女性の中で唯一ピカソを捨てた自立した女性です。
同年、ピカソは陶芸の制作場で働いていた45歳年下のジャクリーヌ・ロックに恋をします。彼女の家に鳩が彼女にバラの花を運んでいる絵があるそうです。彼女の家にチョークで鳩の絵も描いていたとか。その頃の作品なんですよね。ピカソの気持ちが伝わってきますね。
1955年に最初の妻のオルガが亡くなり1961年に2人は結婚しました。ピカソが亡くなるまでの11年間を一緒に過ごしたそうです。
職人が作った柔らかい状態の花瓶に、ピカソは迷いもなく命を吹き込むように、鳩の形にしていきます。底の部分は花瓶のままのようなので、おそらく斜めに切って、下の方をめくったのでしょう。神の手ですね。
(文/The Blue Box)
作品情報
作家名:パブロ・ピカソ PABLO PICASSO
作品名:Dove Subject 27/500
サイズ:H/16cm I/23cm
制作年:1959年 Executed in 1959.
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