まずはこの作品をじっくりご覧下さい。
おどろおどろしいくらいの暗雲立ち込める中、雲の中に何かがいます。
また、その下には戦が起きていて、人と人が争ってます。
雲の間から見え隠れしているのは輪宝という法具で、この雲の中に怒れる阿修羅がいるのがわかります。
画面のほとんどが、そら恐ろし雲の表現ですが、画面下の部分は非常に細かく繊細に表現されています。
雑兵でそんなにいい装備ではないんですが、甲冑の細かな彩色は青邨らしく鮮やかに描かれています。
この上下の違いによって雲の中の怒れる阿修羅が暴れているようで、とてもすごい絵だと思います。
タイトルは〈修羅道〉
阿修羅の住む、争いや怒りの絶えない世界という意味です。
仏経では、永遠の生命が6つの世界を迷いながら巡るという教えがあり、これは六道と言われています。
六道には地獄界、飢餓界、畜生界、修羅界、人間界、天上界があり、これらは迷いの世界です。中でも修羅界では、闘争が絶えず、常に争いごとが起こると教えられています。
まさにこの怒れる阿修羅は人間の絶え間ない争いに対する、警告であり戒めなのかもしれません。
この作品を教訓として争いのない平和な世界に望みを託して、今年も過ごしていきたいと思います。
(文/青龍堂店主)
作品情報
前田青邨「修羅道」
サイズ. 126.5×41cm
絹本彩色 共箱
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