小泉淳作淳作先生という遅咲きですが素晴らしい仕事をされた絵描きさんがいらっしゃいました。
今回ご紹介するのはその先生が日経新聞の連載の挿絵として描いた「土佐の海」という作品と、先生が作陶された徳利です。なかなか絵描きとして食べられない頃はデザインの仕事をしたり、作陶して生計を立てていたそうですが、物の本質を捉えるような画風は魅力があり、晩年は大きな仕事をされました。
鎌倉建長寺や京都の建仁寺の天井画の龍や東大寺の襖絵なども手掛けました。
また、人気だったのは蕪の絵です。その存在感はもはや蕪というよりも、惑星のような雄大な月の面影すら感じます。
この土佐海も描きたいと思って出かけ、納得できるまで何時間もかけて写生をしてはじめて作品として仕上げます。
墨と胡粉(白の絵具)にこだわった先生のこの小品の中に風景に見入ってしまいます。
染付もなんとも愛らしく箱書きには太刀洗窯とあります。アトリエが鎌倉にあり近くの朝比奈切通しに向かう途中に、太刀洗という小さな水流があります。これは上総国の上総介広常の権力が高まるにつれ、謀反の疑いを掛けられ、1183年に頼朝の命を受けた梶原景時に暗殺されました。その梶原景時が太刀を洗ったと言われています。
絵も作陶も決して気を衒うことのない先生らしい、不器用なようで物の本質を捉えている味わいがありますね。
(文/青龍堂店主)
小泉淳作
「土佐の海」12×15cm
紙本彩色 共シール
「染付 徳利」H9cm
共箱
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