今日ご紹介するのは小林古径の朝顔です。
墨の「たらし込み」で表現している葉と緑青の葉。その対照的な色の表現に魅せられます。
また朝顔の花も群青の鮮やかな色彩で「濃淡」で表された花が、可憐に咲き誇っています。
この朝顔の花と葉の表情たまりませんね。
とてもいい絵なのですが、いつもの古径の余白とは違うような印象を受けました。
真ん中に空間が空いているような…
「箱書き」を見て、納得です。
お嬢様の通さんの箱書きで
「写光琳筆香包」
と書いてあります。
この絵をご覧ください。
シカゴ美術館にある尾形光琳の「朝顔図香包」です。
小林古径のこの朝顔は、尾形光琳の「朝顔図香包」を模写したものであることがわかりました。
金地と紙の違いはありますが構図は瓜二つです。
さらに、この作品よく見てみてください。縦横に2本づつ折ったような痕がわかりますでしょうか?
この作品は香包と呼ばれ、香席で使われるものです。中に香木を入れて料紙で四つ折りにして使います。
この絵の真ん中は包んだ際に、底になるので絵が入っていないのですね。
包んだ時に表となるのは画面の左側です。
光琳の作品で香木を包むなんて大変贅沢な遊びですね。
この光琳の香包という作品は、同じ大きさで6点(千羽鶴、白梅、紅梅、燕子花など)現存しています。全て同じ時にデザインされた作品と言われています。
古径はこの光琳の朝顔の卓越したデザインに魅せられて真摯に模写したのでしょう。
光琳のデザインを基に、しっかり古径の品の良い世界観が出ている素晴らしい作品です。
(文/青龍堂店主)
商品情報
作家名:小林古径
作品名:「朝顔」
サイズ:41.8㎝×31.7㎝
紙本彩色
通女箱
東京美術倶楽部鑑定あり
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