岸田劉生とも親交の深かった洋画家の木村荘八(きむら しょうはち1893〜1958)。
幼い頃から芝居見物に熱中して、学校へもあまり行かなかったそうです。
ご紹介するのは木村荘八の描いた「助六」です。
この助六は、本当に男前ですね。
「助六」は、正式名は「助六由縁江戸桜」(すけろくゆかりのえどざくら)と言い、市川團十郎家のお家芸とされる歌舞伎十八番のうちのひとつです。
吉原の花魁「揚巻」(あげまき)の情夫の助六は、なぜか道行く男達に手当たり次第喧嘩をふっかけます。それは、わざと相手が刀を抜くように仕向けて、源氏の宝刀「友切丸」を見付けるため。実はこの助六、宝刀友切丸の探索と父の敵討ちのため、侠客に身をやつしていた源氏の武士・曾我野五郎時致(そがのごろうときむね)だったというお話です。
洗練された江戸の粋、その象徴のようないい男ですね。
実は皆さまご存知の助六寿司、これは助六の恋人・揚巻の「揚」を油揚げの「いなり寿司」に、「巻」を海苔で巻いた「巻き寿司」になぞらえだそうです。
助六が紫の鉢巻を頭に巻いていることから、助六を「巻き寿司」、揚巻を「いなり寿司」と見立て、2人を寿司で添い遂げさせたのだという説もあります。
確かにこの絵の中の助六の鉢巻は紫色ですね。
江戸の粋、感じて頂けましたでしょうか?
(文/青龍堂店主)
作品情報
木村荘八 「助六」
紙本・彩色
39㎝×36㎝
共箱・軸装
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